第8講 黒字企業のオーナー社長が M&Aで大きな個人資産を築ける理由 ~本当の金持ちになるヒトは、所得税の構造に潜む、カラクリを利用している~
黒字企業のオーナー社長が
M&Aで大きな個人資産を築ける理由
日本では、M&Aは「後継者がいない会社が、仕方なく使う事業承継の手段」として語られることが少なくありません。 しかし、M&Aは本来、オーナー経営者が会社を成長させ、その企業価値を個人資産へ転換するための、極めて戦略的な手法です。
役員報酬として毎年高い所得を受け取るのか。 会社に利益を蓄積し、企業価値を高め、最後に株式譲渡によって回収するのか。 この違いを理解できる経営者は、M&Aを「出口」ではなく「経営戦略」として活用できます。
目次
オーナー経営者は、サラリーマンとは異なり、会社の利益をどのように残し、どのように個人資産へ転換するかを設計できます。 役員報酬、配当、退職金、株式譲渡、資本提携、M&A。 それぞれ税務上・経営上の意味が異なります。
本稿では、M&Aを単なる事業承継ではなく、黒字企業のオーナー社長が企業価値を高め、最後に大きな資産形成を行うための戦略として解説します。
1. 事業承継で仕方なくM&Aを利用する時代から、成長戦略としてM&Aを使う時代へ
日本で中小企業M&Aが注目される最大の理由の一つは、後継者不在です。 子どもが会社を継がない。 幹部社員にも承継できない。 従業員や取引先のために会社を閉じることもできない。 そのような状況で、第三者に会社を引き継ぐ手段としてM&Aが使われています。
これは、事業承継型M&Aとして非常に重要な役割を持っています。 しかし、M&Aの本質は、後継者がいない会社の救済策だけではありません。
米国や欧州では、会社を成長させ、一定の企業価値に達した段階で売却し、創業者やオーナーが次の投資や人生の自由を得るという考え方が、経営戦略として定着しています。 つまり、M&Aは「仕方なく行うもの」ではなく、「経営者が最初から出口を設計して行うもの」でもあるのです。
後継者不在の会社を第三者へ引き継ぎ、従業員・取引先・事業を守るためのM&Aです。
成長資金、資本提携、投資企業との連携により、企業価値を高めるためのM&Aです。
会社を成長させた後、株式譲渡によって企業価値を個人資産へ転換するM&Aです。
オーナー社長がM&Aを戦略的に活用する場合、重要なのは「いつ売るか」だけではありません。 「売れる会社に育てる」「買い手が評価する利益構造をつくる」「株主構成を整える」「税務・労務・契約を整備する」「DDに耐えられる会社にする」ことが重要です。
2. 役員報酬の罠 — 給与所得の世界
オーナー社長が個人資産を増やす方法として、最も分かりやすいのは役員報酬を増やすことです。 しかし、役員報酬は給与所得として課税され、所得が高くなるほど税率が上がる累進課税の対象になります。
日本の所得税は、課税所得に応じて5%から45%まで段階的に税率が上がります。 課税所得4,000万円を超える部分には、所得税45%の税率が適用されます。 さらに、個人住民税所得割は原則として10%です。
したがって、オーナー社長が会社の利益をすべて役員報酬として受け取ろうとすると、高い税率の世界に入ります。 もちろん、役員報酬は生活費や社会保険、退職金設計との関係で必要です。 しかし、個人資産を大きく残すという観点では、役員報酬だけに依存することには限界があります。
中小企業のオーナー社長は、給与所得者と異なり、会社の利益配分、役員報酬、内部留保、投資、資本政策を設計できる立場にあります。 その設計の最終形の一つが、M&Aによる株式譲渡です。
3. M&Aで受け取る所得は、株式譲渡所得になる
オーナー社長が保有する自社株式をM&Aで第三者に売却する場合、その売却益は、原則として株式等の譲渡所得等として扱われます。 株式等の譲渡所得等は、他の所得と区分して税額を計算する申告分離課税の対象です。
ここで重要なのは、会社の価値を高めて株式を売却する場合、オーナー社長が受け取るのは毎年の役員報酬ではなく、株式の譲渡対価であるという点です。
会社に利益を蓄積し、純資産を厚くし、収益力を高め、買い手から見て魅力ある会社に育てる。 その結果として株式価値が上がれば、M&A時の株式譲渡対価も高くなります。
毎年の給与所得として課税されます。高額になるほど累進課税の影響を受けます。
退職所得として一定の優遇がありますが、支給額や在任年数、税務上の妥当性が問題になります。
自社株式を第三者に売却し、企業価値を個人資産へ転換する方法です。
4. 会社で出した利益を、給与所得ではなく企業価値で受け取る
オーナー社長が会社の利益をすべて役員報酬で受け取ると、その年の給与所得として課税されます。 一方、会社に利益を残し、内部留保を厚くし、事業投資を行い、企業価値を高めれば、その価値は株式価値として蓄積されます。
M&Aで自社株式を第三者に譲渡すれば、オーナー社長は、その企業価値を株式譲渡対価として受け取ることができます。 この構造を理解すると、オーナー経営者にとってM&Aは、単なる会社売却ではなく、会社で生み出した価値を個人資産へ転換する重要な出口戦略であることが分かります。
ただし、会社に利益を残せば自動的に高く売れるわけではありません。 買い手が評価するのは、単なる現預金や過去利益だけではなく、将来の収益力、事業の再現性、組織の継続性、顧客基盤、DDに耐えられる管理体制です。
したがって、M&Aで高く売るためには、数年前から会社を「買い手が評価しやすい形」に整えていく必要があります。
5. M&A諸経費と補助金活用の考え方
M&Aには、仲介会社やFAへの報酬、企業概要書の作成、デューデリジェンス対応、弁護士・会計士・税理士への専門家費用、PMI支援費用などが発生することがあります。
売り手側の場合、成功報酬型の支援者を選べば、成約時の譲渡対価から支払う形を取れることがあります。 一方、買い手側では、基本合意後に財務DD、法務DD、ビジネスDD、労務DD、税務DDなどを実施するため、専門家費用が大きくなることがあります。
M&Aは、買い手にとっても大きなリスクを伴う投資判断です。 買収後に簿外債務、労務問題、税務リスク、許認可問題、主要顧客の離脱、組織崩壊が判明すれば、大きな損失につながります。 そのため、DDに十分な費用と時間をかけることは、買い手にとって不可欠です。
補助金は、M&A費用を自動的に補填してくれる制度ではありません。 申請すれば必ず採択されるものでもありません。 そのため、M&Aを検討する場合には、支援者選びと同時に、補助金の公募要領、申請時期、交付決定のタイミングを確認する必要があります。
URVグローバルグループのM&Aアドバイザリー事業では、売り手側・買い手側の双方について、M&A戦略、資本政策、DD対応、PMIまでを視野に入れた支援を行っています。
6. 会社を成長企業に育て、M&Aで売り抜ける
M&Aを戦略的に活用する経営者は、会社を売る直前になってから準備を始めるのではありません。 会社を成長企業に育てる段階から、将来のM&A、資本提携、投資受入、事業承継を見据えて経営します。
企業価値を高めるには、単に利益を出すだけでは不十分です。 買い手が安心して投資できる会社にする必要があります。
- 売上と利益が継続的に伸びている
- EBITDAや営業キャッシュ・フローが安定している
- オーナー社長に依存しすぎない組織になっている
- 主要取引先・顧客・仕入先との関係が整理されている
- 労務・税務・契約・許認可に大きな問題がない
- 株主構成が整理されている
- 買収後のPMIで成長できる余地がある
会社をこのような状態に育てれば、M&Aは単なる「出口」ではなく、オーナー経営者、従業員、買い手企業の三者にとって価値のある選択肢になります。
オーナー社長は、会社の成長によって株式価値を高め、M&Aによって大きな個人資産を得る。 従業員は、より大きな資本や経営資源のもとで、会社の成長に参加できる。 買い手企業は、自社だけでは得られなかった事業基盤、人材、顧客、ブランドを取得できる。
これが、URVグローバルグループが提唱する成長企業M&Aの考え方です。
M&Aは、会社を手放すためだけの手段ではありません。
会社を成長させ、企業価値を高め、オーナー経営者の人生と次の挑戦を切り開くための経営戦略です。
成長企業M&Aサービスのご紹介
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