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特集「補助金を経営の財務戦略に位置付ける」

第1講 補助金の経営戦略的価値を考える

補助金は、企業の資金調達の手段だ

補助金は、よく「返済しなくてよいお金」と言われます。この言葉をもっと進めると、補助金は企業にとって、「自社が納税した資金の還付による成長支援政策」であり、「成長投資への資金援助策」でもあります。

国や地方公共団体は、納税主体としての、あるいは雇用の受け皿としての企業の成長を図らなければ、その未来はありません。企業を育成・成長させ、雇用を創出して消費を拡大しなければ、消費税も、法人税も、所得税もあがってきません。

そこで、国や地方公共団体は、補助金を使い、企業の成長のために資金を採択された企業に配布します。補助金は、必ず利用目的が特定され、配布される前に、その目的の事業が確実に行われたことが確認されてから、後払いで入金がなされます。

したがって、補助金は、特定企業に留保されずに循環することになり、経済の活性化につながります。

将来の企業の成長を促して、未来の経済成長や税の増大を図り、同時に経済の循環を活性化させる目的で、国や地方公共団体が積極的に行うのが、補助金政策です。

企業側から考えると、補助金は、特定の成長投資のための資金調達であり、支払った税金を還元させる手段と、会社の経営上は位置付けられます。

補助金を受けた時の財務上の位置づけから、そのインパクトを考える

補助金を企業が受け取ると、会社の財務にどのようなインパクトを与えるでしょうか?

補助金を、「経費が戻ってくる」と勘違いしている経営者の方は多いのですが、これは、企業の財務に関して、かなり無知な人が侵す間違いです。

以下、まずは、正確に補助金を受け取った場合の、会社の財務に与えるインパクトを理解してください。

補助金収入は、営業外収益となる

補助金は、繰り返すようですが、一定の経費が国や地方公共団体から戻ってくるものではありません。

よく、「特定の経費の一定割合を補助する」と表現されていますが、これは、企業の財務では特定の経費は一旦計上され、その後一定の審査を通った場合、その一定割合にあたる金額が、補助金として別途に会社に支払われるのです。

したがって、補助金に支払われる金額は、損益計算書上の営業外収益として計上されます。そのため、補助金は、貸借対照表上の負債に計上される借入金と異なり、法人税等の課税対象になります。

そして、その補助金の入金時期も、経費の支出される決算期とは異なる場合があります。補助金は、採択をされたからと言って、必ずもらえるものではありません。採択の後、その対象の事業の実際の稼働が確認され、支払いまで終了した後、その関係書類をすべて提出し、審査を受けて、はじめて受け取れるものです。

審査期間は、どの補助金もそれなりに長く、どの程度の審査期間がかかるかは、まったく企業側にはわかりません。したがって、経費の支出と補助金の入金が、決算を跨ぐことは普通です。したがって、経費の支出時には、その支払いにあてる資金繰りが必須となり、一方、補助金の入金時には、その金額がそのまま利益となるため、そのままだと税務上の損金がゼロとなり、補助金額の30%程度が、法人税・法人地方税が課税されてしまいます。

したがって、この対策としては、補助金相当額の損金を計上するか、法人税等の支払のための資金を補助金から残しておく必要があります。

これを考えずに、単に、補助金を経費が相殺されるような誤った感覚で、補助金に手を出すと、資金繰りと納税に大きな問題を引き起こすことになってしまいます。

補助金収入には、消費税納税がいらない

一方、補助金の収入で欠かせないメリットもあります。それは、補助金には預かり消費税がなく、したがって、消費税の納税売り上げの対象にならないという点です。

2023年10月から始まるインボイス制度で、多くの会社や個人事業主が、新たな消費税課税事業者になります。消費税は、どの規模の企業にとっても、非常に重い税のため、2024年以降、多くの零細企業や個人事業主が、消費税の納税に苦しむことが予想されます。

特に、売上5000万円未満の会社は、簡易課税方式で納税をすることになると思いますので、支払い消費税に関係なく、売上に比例して、消費税が増えてゆきます。

そうすると、薄い利益率の内税方式の価格設定をしている企業や個人事業主が、消費税納税で大打撃を受けます。

一方、補助金には、預かり消費税がないため、補助金を受け取っても、消費税の課税所得にはなりません。

今後、売上5,000万円未満の、消費税課税事業者の方には、補助金は、非常にありがたい収入になります。

成長企業に欠かせない「補助金の技」の熟知という要件

成長するコストである税金 その還元策である補助金の活用は、成長戦略の鍵

企業の成長には、その財務諸表の中の純資産を成長させることが不可欠です。純資産を健全に成長させるには、どうしても利益を出すしか方法はありません。一方、利益を出せば、そこには法人税等の税金の支払いが不可欠になります。加えて、利益を出すためには、その成長のための事業投資やマーケティング投資が不可欠となります。

補助金は、国や地方公共団体による税金の成長企業に対する還元策でもあります。

その還元の目的は、労務系の補助金は、ヒトを雇用することで、その初年度の給与等を補助する発想にたっていますので、成長企業の人件費投資の補助を目的とし、中小企業支援策の補助金は、成長のためのマーケティングの支援の目的となります。

ともに、企業の成長を支援するための政策ですので、この賢い利用は、成長企業の必須のスキルとなります。

URVグローバルグループの経営支援事業では、補助金の申請から受け取りに至るまでの総合的な支援を専門家が行っていますので、ご利用ください。

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会社の成長を図るための補助金の世界の情報を、この特集では発信をし続けてまいります。

続く

本稿の著者

松本 尚典
URVグローバルグループ 最高経営責任者 兼 CEO
株式会社URVプランニングサポーターズ代表取締役 兼 エグゼクティブコンサルタント

松本 尚典

  • 米国公認会計士
  • 一般財団法人M&Aアドバイザー協会認定M&Aアドバイザー

日本の大手銀行から、ニューヨーク ウオール街での金融系コンサルタント業務を経験した後、日本に帰国し、国内の大手企業数社の役員の歴任。この間、M&A大国アメリカで、数多くのクロスボーダーM&Aや、TOB案件を纏めあげ、そしてまた、日本でも多くのM&A案件を投資企業側の責任者として纏めた、豊富なM&A実務経験を有する。
2015年にURVグローバルグループのホールディングス会社で、経営支援事業を本業とする、株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を設立。多くの中小企業の経営者の経営顧問や監査役として、中小企業の成長戦略に関わる。
こうした業務の中で、投資企業側の事情と、投資を受ける中小企業側の事情の双方に精通する知識と経験を活かし、成長企業への投資案件に特化した、成長企業M&A事業に進出する。

松本 尚典のプロフィールはこちら

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