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特集「M&Aを正しく活用する時代」

第12講 M&Aで会社を売る場合、セカンドオピニオンを求めよう

M&Aで会社を売る価格 バリュエーションには、3通りの算出法がある

M&Aにおける企業の適正な取引価格とは?

バリュエーションとは、企業の現在価値を算出することです。

M&Aは、売り側と買い側の合意による会社や事業の売買契約ですので、その価格は、基本的には両者の合意によって決まります。

バリュエーションによって算出された価格を、買い方が常に払うわけではありませんし、売り方がそれ以上の価格でなければ売らないと主張することも珍しくありません。

買い方が、どうしてもその企業が欲しいと考える場合には、価格は上昇します。逆に、売り方が社長の健康悪化などの理由で現金化を急ぐ場合には、価格は安くなります。

しかし、そうはいっても、売り手も買い手も、取引の適正な価格を無視しては、売買は成立しません。その適正な価格を算出するのが、バリュエーションです。

バリュエーションには、数種類の方法があり、そのいずれかをとるかによって、適正価格が違ってきます。そして、バリュエーションは、その算出に、かなり専門的な分析を要します。

そのため、M&Aに精通した買い方企業のプロの方と、M&Aがはじめてという売り方企業のオーナー社長の間では、どうしても前者の主張が、有利になりがちです。

これを契機に、売り側のオーナー社長が、買い側の交渉に不信感を持つことが、M&Aでは非常に多いのです。

そのような場合、現在、依頼されている仲介会社とは別の、コンサルティング会社に、セカンドオピニオンを求めることがお勧めです。

3通りのバリュエーション算出法

まず、始めに、バリュエーションの方法について発信して参ります。

バリュエーションには、3つの方法があります。

  • 時価純資産法財務デューデリジェンス
  • DCF法法務デューデリジェンス
  • 取引事例比較法労務デューデリジェンス

このうち、3の取引事例比較法は、取引の類似事例の蓄積がある上場企業にしか適用できませんので、非公開の中小企業では使えません。

そこで、ここでは、1の時価純資産法と、2のDCF法を解説し、更に、最近多くの買い側に採用されているEBITDAを基準にする方法を解説して参ります。

時価純資産法

時価純資産法は、過去に事業の期間と積み上げが長く、純資産とブランド力が積みあがっている企業の評価に適した方法です。

資産から負債を差引いた純資産を基礎に、そこに「のれん」と呼ばれる評価を加算して、企業価値を算出する方法です。

企業価値を現在の価値を基礎に算出する方法で、日本企業の中小企業のM&Aでは、非常に多く用いられる方法です。

日本の会計や税務の基準とも一致する方法です。

DCF法時価純資産法

ディスカウント・キャッシュフロー法と呼ばれる、主にアメリカ企業が好む方法です。

日本でも、外資系企業が買い側のM&Aや、買い側のM&A責任者にMBAホルダーの方がおられる場合、DCF法による算出が行われます。

その企業が生み出すく将来のキャッシュフローを、割引率という基準を使って現在価値に引き直して現在の企業価値を算出する方法です。

企業が未来の一定期間に生み出す価値を、現在価値に直す方法として、説得力がある方法のように見受けられます。しかし、未来に生み出すキャッシュフローはあくまでも予測でしかなく、また割域率の設定も、ある程度政策的に変更できてしまうため、売り側と買い側の間で、それらの設定をめぐって論争が起きやすいのが大きな欠点です。

アメリカのM&Aのように、敵対的な買収も厭わない土壌でのM&Aには非常に機能するのですが、日本の中小企業のM&Aのように、友好的なM&Aを志向する土壌では、バリュエーションをめぐって協議が決裂する可能性が高く、したがって、日本では、DCF法は、あくまでもバリュエーションの参考程度の指標となる場合がほとんどです。

EBITDAを基準にした算定法

最近、僕が協議をする日本の買い方企業では、非常に多くの担当者が、
「うちは、EBITDAの10倍までです。」
というような言い方で、買いの金額の限度を示されてきます。

EBITとは、Earnings before Interest and Tax の略です。
利払い前、税引き前当期利益を指します。

つまり、企業の税引き前当期純利益に、負債に対する利払い金額を割り戻した金額をEBITと言います。

EBITDAとは、Earnings before Interest and Tax に、Deprecitation and Amortizationを加えた略です。
EBITに、減価償却費を更に割り戻した金額が、EBITDAです。

法人税額や利払い金額や、減価償却額は、会計上の基準というよりは、各国の税務上の法律に影響されることが多く、非常に政策的に決まることから、そのような外国人が知りにくいファクターを取り除いた金額で、株価を判断するというのが、EBITDAの考え方です。

そして、そのようなEBITDAを基本にして、その何年分かの金額を将来価値とみなして、割引率を使わずに投資金額を算定するというのが、先にあげた、EBITDAの何年分という考え方です。

仮に、10倍で買うという場合、現在のEBITDAと同様のEBITDAがその企業から上がった場合、10年間で、損益を分岐させるという考え方であるといえます。

M&Aのプロが揃う買い側企業が価格を抑え、早く売買を成立させたい仲介会社が追随する

以上のような企業の価値を算出するバリュエーションは、実はそれほど複雑な数式を使う高等数学的な計算を要するものではありません。最も複雑なDCF法でも、割引き率の計算は、せいぜい、中学生が習うレベルの数学の計算で算出可能です。

ところが、M&Aに精通してプロを自負する方々は、WACCなどの概念を用いた数式で、もっともらしい計算を自分の側に有利に用いて、相手に納得をさせようとします。

このようなことになると、売り側の経営者の方からみると、何となく騙された感が出てしまうのはもっともなことです。

本来、数学の式は、自然科学的に公正に用いるべきなのですが、バリュエーションに関わる数式は、そのファクターの設定如何で、その結果を操縦できてしまいます。

M&Aのプロが揃う買い側企業のほうが、このようなことに精通しており、バリュエーションの議論になると、買い側が有利になります。そこに、早く売買を成立させて、成功報酬をえたい仲介業者が追随するため、売り側が、疑念をいだいてしまうのです。

売り側にとって、売り急ぎは禁物!

まず、このような場合に念頭に置くべきことは、企業の売買価格は、なにも、企業のバリュエーション通りである必要は全くないということです。

売り側と買い側が、一致して納得した価格で、成立をさせればよいのです。

一番、問題なのは、現在の日本のM&Aが、事業承継型のものが主流になっているため、売り側が、「早く売らねばならない事情」があり、それを買い側に見透かされていることです。

こうなると、理論で推してくる買い側に対して、「もうこれでいいから売ってしまおう」という結果になり、売り側の社長が人生をかけて作った会社が、買い側と仲介会社の思惑通りに、「スピーディ」に売られてしまうのです。

したがって、売り側は、売り急ぎの事業がないこと、売り急ぐ事情を買い側に見せないことが重要です。

M&Aアドバイザリーを行う、経営コンサルティング会社なら、セカンドオピニオンの依頼に応じてくれる

そして、売り急がずに、客観的な観点から、M&Aアドバイザリーを行っている経営コンサルティング会社に、セカンドオピニオンを求めることも、一案です。

アドバイザリーというのは、仲介が買い側と売り側の双方の仲介を行う形態に対して、売り側・買い側の一方だけにつく形態です。

仲介は、手数料が双方から入るため、一案件の中の手数料が最大化しますので、多くのM&Aのブティックは、仲介案件を目指します。

しかし、M&A大国のアメリカでは、仲介は、双方代理の禁止に抵触するとして、違法な行為とされています。

日本では、不動産の世界で、仲介が広く行われているため、M&Aの世界でも、仲介が違法ではありません。日本の民法で双方代理を禁じる、民法108条に仲介は抵触しないと解釈されています。

しかし、外資系や上場の買い側企業は、アメリカでのM&Aの形態を基本に、仲介業者のM&Aの介入を嫌う傾向にあります。売り側・買い側の双方が、代理人をつけて交渉するとう形態がアメリカのM&Aですので、この形態を採用することを希望されるのです。

この形態は、価格において、双方の主張がかみ合わず、話が決裂する可能性が高まります。ただ、それは、むしろ、売り側も買い側も、妥協しないで、対等な交渉ができるというメリットにつながります。

株式会社URVプランニングサポーターズでは、アメリカでM&A業務を積んできた僕の経験から、仲介だけでなく、アドバイザリーの形態で、一方だけに就かせていただく業務も、行わせていただいています。

加えて、株式会社URVプランニングサポーターズは、本業が経営コンサルティング業務ですので、M&Aのセカンドオピニオンも、安価な相談料で承っています。

M&Aについて、お気軽にご相談ください

秘密厳守にてご対応いたします。まずはお気軽にご相談ください。

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納得がいかない場合、専任契約は、最長でも6か月で解約できる

セカンドオピニオンを行い、現在、進めているM&Aに納得がいかない場合、一旦、話を白紙に戻す勇気も必要です。

M&Aというのは、仲介やアドバイザリーを行っていると思うのですが、どの案件も、クロージングの後、入金があるまで、結果がわからないものなのです。

クロージングの前日に、売り側から、M&Aの話を白紙に戻す、という連絡を受けることもあるのです。

もちろん、これは極端な例ですが、納得がいかないまま、仲介業者に押されてクロージングまでたどり着いてしまったけど、どうしても、納得がいかない、という売り側の経営者は、案外、多いのです。

このような状態に至らないように、早めに引くことも大切な意思決定です。

現在、特別な事情がない場合を除き、M&Aの仲介やアドバイザリー業者との専任の仲介契約は、契約期間が最長でも6か月となっていると思います。この時点で、仲介会社との更新をせずに、一旦、M&Aを考え直し、出直すことも、また、一つの方法だと、僕は思います。

M&Aは、事業承継や企業の成長にとって、一つの選択肢ではありますが、逆をかえせば、選択肢の一つにしか過ぎないのです。

続く

成長企業M&Aサービスのご紹介

強い成長を目指す企業(成長企業)と、投資によってスピードある新規事業の参入を目指す企業(投資企業)の、資本提携をM&Aの手法で実現する成長企業M&A

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成長企業M&Aとは、成長期にあるベンチャー企業や中小企業と投資企業を仲介し、飛躍的成長を遂げるために、M&Aという手法で資本提携関係を結ぶ手法です。

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本稿の著者

松本 尚典
URVグローバルグループ 最高経営責任者 兼 CEO
株式会社URVプランニングサポーターズ代表取締役 兼 エグゼクティブコンサルタント

松本 尚典

  • 米国公認会計士
  • 一般財団法人M&Aアドバイザー協会認定M&Aアドバイザー

日本の大手銀行から、ニューヨーク ウオール街での金融系コンサルタント業務を経験した後、日本に帰国し、国内の大手企業数社の役員の歴任。この間、M&A大国アメリカで、数多くのクロスボーダーM&Aや、TOB案件を纏めあげ、そしてまた、日本でも多くのM&A案件を投資企業側の責任者として纏めた、豊富なM&A実務経験を有する。
2015年にURVグローバルグループのホールディングス会社で、経営支援事業を本業とする、株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を設立。多くの中小企業の経営者の経営顧問や監査役として、中小企業の成長戦略に関わる。
こうした業務の中で、投資企業側の事情と、投資を受ける中小企業側の事情の双方に精通する知識と経験を活かし、成長企業への投資案件に特化した、成長企業M&A事業に進出する。

「M&Aを正しく活用する時代」過去の記事はこちら

第1講 世界のM&Aを知ろう

第2講 今、うちの会社はいくらなの?~企業のバリュエーション~

第3講 株主が複数いる企業が行う、M&Aへの対策 ~スクイズアウト~

第4講 M&A買い側企業担当者の心得

第5講 株式譲渡と事業譲渡、その戦略的な活用法

第6講 会社の資金がショートしてから、慌てて調達に動くと大変なことになる!

第7講 M&Aでは、何故PL上の利益よりも、EBITDAを重視するのか?

第8講 黒字が出ている会社のオーナー社長が、M&Aで金持ちになるのは何故か? ~本当の金持ちになるヒトは、所得税の構造に潜む、カラクリを利用している~

第9講 M&Aの世界は、なぜあらゆるところが秘密のベールに包まれているのか?

第10講 事業譲渡をする会社はここに気を付けよう ~そのメリットとデメリット~

第11講 M&Aを考えるすべてのヒトが知らなければならない天王山 デューデリジェンス

第12講 M&Aで会社を売る場合、セカンドオピニオンを求めよう

第13講 M&Aの仲介 専任と非専任 どっちが有利?

第14講 中国企業や中国資本のM&Aや投資を恐れず、活用しよう

第15講 事業承継や資金調達で、M&Aを使う場合は、政府の登録機関に相談しよう

第16講 日本で増加してきた「同意なき買収」 米国に近づいてきたM&Aの今を概観する

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