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特集「補助金を経営の財務戦略に位置付ける」

第2講 社員が5名以下の会社や個人事業主には、持続化補助金がお勧め

特集「補助金を経営の財務戦略に位置付ける」
第1講 補助金の経営戦略的価値を考える

目次

補助金には、難易度がある

補助金には、労務系の補助金と、事業系の補助金があります。労務系の補助金は、従業員を雇用した場合、その賃金を補助するための補助金です。したがって、これは、雇用促進策で導入されるものであり、企業の成長を支援する補助金ではありません。

ここでは、企業が成長し、売り上げを伸ばすための投資を補助する、事業系の補助金を議論の対象として説明をしたいと思います。

事業系の補助金を利用する方は、是非、次の補助金の性格を知っておいてください。

  • 補助額が大きい補助金は、採択率が低い
  • 補助金によって、その事業範囲が異なる
  • 補助額が大きい補助金ほど、事業報告後の審査期間が長く、入金までの期間が長い

補助額が数千万円に上る補助金を活用するためには、その事業に要する経費を、すべて業者に先払いする必要があり、審査期間も長いので、入金までの期間が長くうなります。したがって、それを行うことができる現預金の余裕がある企業しか、この補助金を活用することはできません。

補助金を最初に活用する個人事業主や中小企業は、、補助額が大きく、補助金申請業者の手数料が高い補助金を狙わず、補助額が小さい補助金からスタートすることをお勧めします。

補助金申請事業者は、大きな補助額の補助金の申請では、報酬が大きくとれるため、大型の補助金を勧めてきます。しかし、大型の補助金は、仮に、採択ができても、非常に大きな額の経費がかかり、補助金の入金までの期間が長く、事業報告で否認や不備ループを起こして入金がえられないケースが、多々発生しています。

小規模会社や個人事業主の方には、持続化補助金がお勧め

このように補助金は、何を使うかを選ぶ必要があります。個人事業主や社員数が5名以内の企業(製造業など業種によっては、社員数10名程度の企業でも利用できる場合があります)の場合、持続者補助金が最もお勧めの補助金です。

何故、お勧めかというと、

  • 補助事業の範囲が広い
  • 年間、数回の応募機会があり、繰りかえし利用できる
  • 事業終了から入金までの期間が比較的短い

持続化補助金は、補助額が50万円から200万円という小規模ながら、他の補助金よりも圧倒的に使い勝手がよい補助金です。

ホームページ制作や、広告費、営業出張費、展示会の出展費用や商品カタログ製作費といった、企業が販売促進をかけるのに不可欠で年度ごとに出費がある経費を広く事業対象とすることができ、年間数回の募集があるので、経費の出費計画にあわせて申請を行うことができます。

事業の支払いを先に行う必要はありますが、事業報告から入金までが3か月程度と短く、運転資金があまり豊富でない企業でも利用しやすいというメリットがあります。

申請や事業の構成・事業報告には、コツがある

補助金の採択を審査するのは、公的な機関の審査を担当する審査員の方々です。その審査員の方々が、最も審査の際に配慮しているのは、その事業の成長性や新規性ではありません。

補助金の審査員の方は、成長企業投資を検討する外資系投資ファンドの投資分析の責任者の方々とは、異質の審査の指針をもった人たちです。また、銀行の貸付の審査担当の方とも、異質な方々です。

したがって、補助金の申請書に記載する事業計画は、投資ファンドから投資を受けるための将来の成長性を説明する資料ではありません。そしてまた、資金の貸し付けを受けるための安定性や流動性を過去の資料から説明する事業計画でもありません。

補助金の採択を受けるための申請は、その事業が期間中に確実に実施できる健全なものであること、そしてその事業が常識にかなった理解がしやすいものであること、そしてその事業が国や地方の補助金の実施方針や手続きに適合することが、不可欠です。補助金の審査では、採択をしたのはいいけれど、実際の事業期間中に終了報告ができないような具体性のない事業は、そもそも採択を受けられません。更に、その資金が客観的に事業に確実に使われたことを証明するため、事業をすべて社内で完結するような形では、補助金を受けられません。

外注業者を客観的に合い見積もりによって選定し、その事業を期間内で見積りから、契約・納品・請求そして入金までが間違いなく行われたことが書類によって証明できる形態でなければ、採択も受けられないし、採択をされても資金の入金まで至らないのです。

補助金の申請や事業の組み方には、かなり特殊なコツがあることを認識して取り組んでください。

したがって、補助金には、その補助金の採択や事業に精通した専門家の支援を受けるのがよいでしょうし、業者選定にあたっても、当該補助金の事業に精通した事業者を選定しないと、最後の入金を受けることができません。

この点、充分、注意をして初期の申請段階から、資金入金までの計画をたてて、取り組むことが肝要だということを、肝に銘じてください。

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続く

本稿の著者

松本 尚典
URVグローバルグループ 最高経営責任者 兼 CEO
株式会社URVプランニングサポーターズ代表取締役 兼 エグゼクティブコンサルタント

松本 尚典

  • 米国公認会計士
  • 一般財団法人M&Aアドバイザー協会認定M&Aアドバイザー

日本の大手銀行から、ニューヨーク ウオール街での金融系コンサルタント業務を経験した後、日本に帰国し、国内の大手企業数社の役員の歴任。この間、M&A大国アメリカで、数多くのクロスボーダーM&Aや、TOB案件を纏めあげ、そしてまた、日本でも多くのM&A案件を投資企業側の責任者として纏めた、豊富なM&A実務経験を有する。
2015年にURVグローバルグループのホールディングス会社で、経営支援事業を本業とする、株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を設立。多くの中小企業の経営者の経営顧問や監査役として、中小企業の成長戦略に関わる。
こうした業務の中で、投資企業側の事情と、投資を受ける中小企業側の事情の双方に精通する知識と経験を活かし、成長企業への投資案件に特化した、成長企業M&A事業に進出する。

松本 尚典のプロフィールはこちら

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