ブランディングの確立は、顧客を商品に誘導し、商品の価格戦略も操縦する

懸命に商品の改良に努め、懸命に販路や販売チャネルを開拓したところに別の企業が参入し、価格が安いわけでもないのに一気にマーケットが持っていかれてしまう、ということは現在のビジネスでは頻繁に起きます。
 
このように、後発の企業がマーケットを短期で奪取できる場合、その後発の企業が先発の企業の商品を検証し、自社が先発企業に勝てる商品戦略で臨んでくる場合もあります。
そして加えて、このような後発企業は、ブランド力が先発企業に勝っている場合が多いのです。

消費者の中には、徹底的に商品の品質とその価格を比較して購買する顧客もいます。
多くの中小企業は、このような顧客ばかりを視野に入れています。
 
しかし多くの消費者は実はそれほど、論理的かつ徹底的に商品や価格研究をしてはいません。直感的に、ブランド力のある企業の商品を選ぶ顧客のほうが、徹底研究をする顧客よりもずっと多いのです。
 
つまり消費者は、ブランド化されている会社名やマークなどから商品を自分自身で連想し、感覚的に購買することが非常に多いのです。

 

ペプシコーラとコカコーラのブランド力の差

ここにブランドに関して、アメリカのシンクタンクで行われた実験があります。

この実験の依頼主は、ペプシコーラを販売するペプシコです。
アメリカ各州で、大規模に行われた消費者調査です。

〇調査方法〇

調査1

消費者に、全くラベルのない同じコップに入った
①コカコーラ(オールドコーク)
②ペプシコーラ(オールドペプシ)

これをそれぞれ飲んでもらい、どちらが美味しいと感じるかを回答してもらいます。

調査2

そのあと、普段あなたはコカコーラボトラーズの商品と、ペプシコ商品の、どちらをより頻繁に購入するかを回答してもらいます。

〇結果〇

調査1

①コカコーラを美味しいと回答した人 → 33%
②ペプシコーラを美味しいと回答した人 → 62%

調査2

コカコーラボトラーズの商品を頻繁に買うと回答した人 → 69%
ペプシコの商品を頻繁に買うと回答した人 → 31%

この調査結果から、覆面状態で美味しいと感じる商品を消費者が選んでいるわけではないことがわかります。この購買の差こそ、コカコーラボトラーズの、ペプシコに対する圧倒的な
ブランド力の差だとペプシコは結論を出し、この圧倒的なブランド力の差を埋める戦略を立案しなければならないと、ペプシコは結論を出したのです。
 
コカコーラボトラーズは創業以来、アメリカのすべての地域で、コカコーラを「本物のコーク」と広告発信をし続け、圧倒的なブランドの差をペプシコとの間で造ってしまいました。
コカコーラボトラーズのマークは、消費者を「本物のコーク」として惹きつける力を築いてしまったのです。ペプシコがその味でどんなにアメリカ人を魅了する改良を続けても、コカコーラに勝てない理由がブランド力の差なのです。

価格面に関しても、ブランド力は機能をします。
 
顧客は決して商品を徹底的に比較し、そのうえで、安い商品ばかりを購買するわけではありません。信頼できれば、あえて価格の高い商品を選ぶことも頻繁にあります。
 
そしてその際に、多くの顧客が高くても購買する動機は、その販売元のブランド力による場合が多いのです。
 これを言い換えますと、ブランド力というものはある象徴的なイメージから消費者を購買に導くチカラです。
そして、ブランド力には商品の価格戦略を操縦する力もあります。
 
中小企業が競合に勝つためにすることは、大企業になることではありません。
ブランド力をつけることなのです。

 
よい商品、競争力ある価格、消費者に便利な販路。
これをつけた後にその商品に対する自社のブランド力をつけること。
 
これこそが対競合で自社の商品を消費者に選ばせ、売上を飛躍的に伸ばす方法です。

中小企業が特定の商品にブランド力をつけるのは、商品ブランドが得策

広告予算を莫大に使える大企業の場合、その企業名自体をブランドに育てることが可能です。
 
Googleや、Amazon。
ソニーや、National。

これらの企業は、企業名それ自体をナショナルブランド化しています。
 
しかし、このようなナショナルブランド戦略を、広告資金力が乏しい中小企業が真似をしても成功しません。
 
中小企業で自社の会社名をそのまま商品のブランド化させようとしている企業がありますが、これは大企業の戦略をそのまま真似をしている形になって、なかなか成功しません。
 
中小企業が比較的成功しやすいブランド戦略は、個別の商品に対応した商品ブランドを決め、これを集中的にブランディングする作戦です。
 

ブランド力を制する中小企業は、大企業も制する

では、資金力が強くない中小企業が、大企業と闘っても勝てるブランド力をつけることはできるのでしょうか?
 
ずばり!
答えは「できます」。
 

中小企業が商品ブランド力で大企業にも勝てる好例「チョウヤ」

その好例が、梅酒販売の首位企業 蝶矢(チョウヤ)ブランドの、チョウヤ梅酒株式会社です。

 

蝶矢は御存知の通り、日本の梅酒販売でトップシェアーを持つ企業です。
サントリー、サッポロ、アサヒなどの巨大企業がどう頑張っても、この梅酒市場で蝶矢のシェアーを崩すことができません。

 

しかし、チョウヤ梅酒株式会社はたかだか、従業員130人の中小企業なのです。
この企業の梅酒シェアーを、多国籍の大企業が束になってかかっても崩すことができないのです。

 

この蝶矢は今、ブランド力を最高級品でこう発信しています。
これは、もう梅酒というより、チョウヤです。」と。

 

蝶矢の勝因は勿論、最良の梅の契約農家からの調達力や、商品開発力もあります。しかしそれは、他の大企業であっても蝶矢以上に持っているはずです。

 

蝶矢の勝因はまさに、梅酒は、チョウヤ、という圧倒的な商品ブランド力で、消費者を引き付ける力にあります。

 

中小企業が商品ブランド力で大企業にも勝てる好例です。

ブランド力をつける、その5つの鉄則

さて、僕はこれまで多くの企業の経営コンサルティングの中で、このブランディング戦略を
提案し、売上の飛躍的な向上を達成してきました。
 
現在、URVグローバルグループでは、2020年12月に設立した株式会社URVテクノインテリジェンスで、有能なマーケターやデザイナーを社内で保有し、僕のブランディング提案を自社グループ内でデザイン化する能力を備えました。
 
今回の発信では、ブランド戦略を考える際に絶対必要な5つの鉄則について、述べてみたいと思います。

ブランド戦略を考える際に絶対必要な5つの鉄則

その鉄則とは、次の5つです。

  • 収縮の鉄則
  • 明解性の鉄則
  • 刷り込みの鉄則
  • 信用力の鉄則
  • 一貫性の鉄則

強いブランドを作る第一鉄則 収縮の鉄則

収縮の鉄則とは、強力なブランドは常にカテゴリーを絞り込み、変化をさせないことにより生まれるという鉄則です。

先に挙げたコカコーラボトラーズは、世界最強のブランド力を持つ企業と言われています。
コカコーラボトラーズは、現在様々な飲料商品を世界で販売しています。
しかし、そのブランドはコカコーラという商品に絞り込まれ、それ以外の商品をブランドから連想させることを絶対にしないことが鉄則となっています。
 
コカコーラが広告などのブランドに使用する瓶を皆さんご存知でしょう。あの瓶には、観る人が心地よくなる水滴が写っています。あの水滴の位置や量は、世界のコカコーラで完全に統一され、絶対に変更しないというルールがコカコーラボトラーズで守られています。
 
例えば、自社の社名をブランドに使いながら、様々な商品を自社ブランドで表象させようとする企業があります。その方法は、自社のブランドを自社自身で打ち壊しているのです。

強いブランドは表象する商品を絞り込み、そこに消費者の連想を導くことを集中させることによって生まれます。
 
コカコーラから、コーラを。
スターバックスが、コーヒーを。
ケンタッキーフライドチキンが、チキンを。
 
すべて多様な商品を扱っていてもブランドで連想されるイメージは、単一に絞り込んでいます。
 
これこそが、強いブランドを作る第一鉄則である、収縮の鉄則です。
 
次回は更に、その他の鉄則を説明して参ります。

 

本稿の著者

URVグローバルグループ 最高経営責任者兼CEO
株式会社URVテクノインテリジェンス 代表取締役社長
モデル芸能事務所 DRISAKU エグゼクティブプロデューサー

松本 尚典

松本 尚典

国内外の外資系コンサルティング会社にて、経営コンサルタントとして、長年に渡り、活躍。大手企業の役員の歴任をえて、2015年にURVグローバルグループのホールディングス会社 株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を設立。
同社の100%子会社として、2020年に、赤坂に本社をおく、株式会社URVテクノインテリジェンスを設立。
多くの中小企業の成長とマーケティングを、経営コンサルタントとして担ってきた経験を基礎に、企業のマーケティング戦略と、モデル芸能事務所を融合した事業を立ち上げ、その構想のもとに、DRISAKUサイトを主催する。

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