マーケティングで成果をあげる、ブランディングのアプローチ

中小企業が成長軌道に乗れるかどうかは、プロモーション戦略が決め手

中小企業の経営者の経営コンサルティングを日々行っている僕からみて、中小企業の弱みの共通点はプロモーションが上手くない、という点です。

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長年に亘り、筆者は、日本の中小企業の経営者を支援して、その企業の販売促進に取り組む中で、感じてきたことがあります。
それは、日本の大企業に比較して、中小企業が圧倒的にマーケティングで弱いのは、プロモーション戦略であるということです。
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一定のレベルに達している中小企業は、商品・サービスで大企業に負けない良質なモノを開発し、企業努力で競争力ある価格をプライシングし、独自の販路や店舗・サイトで一定の販売をされています。
 
ところが、ここで終わってしまっているというのが、中小企業のマーケティングの特徴です。大企業はここから商品のブランディングを行い、プロモーションを行って、販売規模を拡大し、利益をあげるのです。中小企業の販売が鳴かず飛ばずになるのは、ここが抜けているからなのです。

マーケティングの4P戦略

  • Product
  • Price
  • Place
  • Promotion

 
中小企業のマーケティングのうち、3つのPはやっているのですが、最後のPであるPromotionに至らずに、チカラが抜けてしまっているのです。そうすると、Placeが拡大していきません。そのため、よい商品を売ってもその販売量が鳴かず飛ばず。結局、商品が生み出す総体の利益が薄くなり、企業規模が中小にとどまり、更に投資が限定される、という悪循環に陥るのが中小企業の常です。
 
プロモーションを展開し、そのチカラで販路を拡大し、物流網を整備して、販売量を出すというプラスの循環にもっていくことが非常に苦手。いいものを安価で売っていればお客様はわかってくれる、という「思い込み」が経営者に強く、「大きなヒット」を出すチャレンジよりも、地道に売っていくだけの道を歩むこととなります。
 
それでは、いつまでたっても大きな利益を生み出す起爆剤の大ヒットが生まれず、そのために、日々の資金繰りに追われて同じ道を毎日ぐるぐる回っているような経営の仕方に終始することになります。
 
この状態を脱却できるかどうかの起爆剤が、プロモーション戦略なのです。

プロモーションの発想の原点は、商品のブランディングの確立にある

では、プロモーション戦略に中小企業が踏み込むための第一歩は、どこからスタートすべきなのでしょうか?
 
多くの中小企業は、プロモーションを「広告」と勘違いしています。広告は勿論プロモーションの一手段ではありますが、プロモーション=広告ではありません。広告の前に、プロモーション戦略として「行わなければならないこと」があります。
多くのプロモーションを商売にする会社は、企業が「行わなければならない」ことがカネにならず、却ってそんなことを行われると、広告費用を圧迫されるため誰もそれを企業に行えと言わないだけなのです。

この「行わなければならない」もの、がブランディングです。

大企業はこのブランディングが得意です。得意であるため、大企業になれたのです。中小企業はこのブランディングが下手なのです。
下手だから、いつまでも中小企業のままなのです。
 
ブランディングをきちんと行わずに広告をいたずらに打つことは、単に広告業者の言いなりに資金を浪費しているのと同じことだと言って過言ではありません。
 
プロモーションの発想の出発点は、広告ではありません。ブランディングをしっかり考え、確立することなのです。BtoCビジネスモデル企業は勿論のこと、BtoBビジネスモデル企業も、ブランディングは絶対に不可欠な戦略です。
 
プロモーション発想の原点は、企業とその商品毎の、ブランディングの確立にあります。
 

ブランディングとは、何か?

ブランディングと言いますと、こんな反論が帰ってきそうです。
 
「ブランディングなんて、大企業のやることでしょ?
うちみたいな零細企業がやることではないよ。」
 
本当にそうでしょうか?
 
僕は申し上げたいのですが、ブランディングとは大企業のものではなくて、優良企業になろうとするすべての企業に必須なマーケティングの出発点なのです、と。

では、ブランディングとはいったいなんでしょうか?
 
以下、誰にでもわかりやすい事例で説明します。

ブランディング 事例1 〜ケンタッキーフライドチキンの例〜

僕は、鶏のから揚げが大好きです。
昨日六本木の街を歩いておりますと、ぷ~ん、と良い香りが漂ってきました。
あ! ケンタッキーフライドチキンの香りだ!
そう、僕はケンタッキーの店の前を歩いていたのです。

もちろん、その店の前にはカーネル・サンダースが立っています。このおじさんをみて、僕はなんとしてもフライドチキンが食べたくなりました。こうして、その瞬間、僕のその日の昼飯の店は決まりました。

皆さん、これと同じ経験をされたこと、ありませんか?
 
スターバックスの看板をみてコーヒーブレイクをすることを決めたり、コカ・コーラのロゴをみて、自動販売機で飲み物を買ったり・・・
 
さて、ケンタッキーフライドチキンの例で考えてみましょう。
 
昨日の僕の昼飯は、ケンタッキー和風チキンカツサンドセットとなりました(勿論、骨なしチキンをチョイス!)。
あんな、カロリーの固まりの健康に悪いものを、選択してしまったわけです。
 
この僕の購買行動を考えてみてください。
 
僕は、昨日の昼飯を選択するのにマクドナルドやモスバーガー(つまり、ケンタッキーの競合企業)と、比較をしてケンタッキーを選択したでしょうか?
更に、マクドナルドのダブルチーズバーガーセット(つまり、競合商品)と価格比較をして、和風チキンカツサンドセットを選択したでしょうか?周辺にあるマクドナルドやモスバーガーを検索し、選択しうる店舗を調べた結果、ケンタッキーを選択したでしょうか?
 
いずれもしていませんね。
 
僕は、昨日の昼飯を競合企業と商品比較をしたり、価格比較をしたり、店舗比較をしたりしていないんです。
 
つまり、昨日の僕の昼飯にマクドナルドやモスバーガーが、どんなに新商品開発をしても、価格を破壊しても、店舗を僕の目の前に出店してもダメなんです。
 
どうしてでしょうか?
 
だって僕は、ぷ~んと、香ってくる香りで周囲を見回し、カーネル・サンダースをみつけてしまった結果、もうどうしたってケンタッキーフライドチキンの、骨なしチキンを食べたくなってしまったのですから。

そう、これがブランディングの効果なのです。
 
ケンタッキーの企業のブランドは、この場合チキンを揚げる香りを誘因として、カーネル・サンダースの人形で僕のアタマにフライドチキンという鶏のから揚げを連想させて買わせたのです。
 
僕は、白い服を着たおじさんの人形をみてフライドチキンを連想させられて、それを競合商品比較もせずに、購買させられているのです。
 
このケンタッキーの手法が、ブランディングです。
ブランド商品と呼ばれる商品は、すべてこのような手法で消費者に購買をさせる商品です。
 
ルイ・ヴィトンのマークを見ると、そのマークの入ったバッグを隣にいる男性にねだりたくなる効果を女性に植え付けているのです。

ねだられた男性もねだった女性も、ルイ・ヴィトンの商品が他のメーカーの商品より優越しているかとか、価格が安いとか、購買しやすいサイトに商品掲載があるとか一切おかまいなしに、ルイ・ヴィトンのバッグを購買するようにイメージの植え付けがなされているのです。
 
この効果は、決してケンタッキーやルイ・ヴィトンのような、世界的なブランド企業の専売特許ではありません。
 
次の事例は、地域ブランドの例です。
 

ブランディング 事例2 〜ウエルシアの例〜

僕は先週の日曜日、車でドライブをしていました。
そうすると、道路沿いにウエルシアの看板が見えてきました。
その瞬間、「あ! そういえば、自宅の胃薬が切れていたっけ。ついでに買っていこうか!」と、思い立ちました。
ウエルシアから出てきた僕の買い物エコバックの中には、常備薬の胃薬と、ついでに買った歯ブラシと、ビジネスソックスの5足セットの束が入っていました。

もう一度、この僕の購買行動を考えてみてください。
 
僕は、胃薬を買わなければならないという意識がアタマの中にあったわけですが、結果、胃薬、歯ブラシ、ビジネスソックスの束を買いました。

その購買をするのに、僕はスギ薬局(つまり、ウエルシアの競合企業)と、比較をしてウエルシアを選択したでしょうか?
更に、スギ薬局で販売するPB商品の胃薬(つまり、競合商品)と価格比較をして、ウエルシアの胃薬を選択したでしょうか?
周辺にある、スギ薬局の店舗を検索し、選択しうる店舗を調べた結果、ウエルシアを選択したでしょうか?
 
いずれもしていませんね。
 
僕は、ケンタッキーと同じく、ウエルシアの胃薬を、競合企業と商品比較をしたり、価格比較をしたり、店舗比較をしたりしていません。
 
つまり、スギ薬局がどんなに新商品開発をしても、価格を破壊しても、店舗を僕の目の前に出店しても、サイトで買いやすくしても、ダメなんです。
 
どうしてでしょうか?
 
僕はウエルシアの看板から、胃薬が切れていることを連想し、「ついで」に、歯ブラシも靴下の束も買うことにしてしまったのです。
 
そう、ウエルシアの看板に描かれたブランドマークは、僕に胃薬の購買を連想させて購買させてしまい、そのついでに、他の用品も購買させてしまったのです。
 
これは何も、ウエルシアのような大企業だけで起きている現象ではありません。
駅前の魚屋さんや薬屋さんでも、消費者に引き起こしている購買誘因行動です。
 
この手法がブランディングです。決して、大企業だけのものでないことがお分かりいただけたでしょう。そして、このブランディングという手法が、極めて有効な購買行動を消費者に引き起こすものだということを、理解されたのではないでしょうか?
 
ブランドとは、マークや人物、香りなど、印象的な象徴と商品を結び付け、その象徴を見せることで、消費者に他の競合を排除して購買を行わせる手法です。

中小企業は、消費者に懸命に商品の優れた点をアピールし、価格の安いことをアピールし様々なネットショップに出店して、必死になって販売をしようとします。
しかし、一向に売れないのです。それでどこかの広告業者にひっかかって、更になけなしの利益をはたいて広告を懸命に出します。
 
この行動、肝心なことをはずしているのです。
 
消費者の購買行動というのは、そんなに論理的ではありません。
直感的なのです。

やずやの青汁が素材が優れているといくら口コミがあっても、サントリーウエルネスのブランディング戦略に負けているために(サントリーのブランディングが浸透しているため)、サントリーがあんなに長いこと、身体に悪いアルコールを主力で販売してきた企業だ、と思うことすら消費者は一切考えずに、サントリーウエルネスの「極みの青汁」が、やずやの青汁の10倍の売上高をあげてしまうのです。
 
消費者は直感的に、サントリーウエルネスをやずやよりも選択するのです。
その直感は、商品説明や価格破壊では、絶対に乗り超えられないのです。

中小企業が勝てないのは、消費者が極めて合理的・論理的に商品選択を行っていると、勘違いしていることにあります。もちろん、合理的・論理的に選択をする消費者もいますが、実は少数なのです。
だから大多数の直感で購入する消費者に、中小企業はモノを売ることができないのです。
 
この消費者の直感を特定の象徴から導き出す手法が、ブランディング技術です。
 
では次回から、ブランディングを中小企業がどう構築するのか、という、まさにブランディング技術の鉄則の具体的方法を発信して参ります。
 
 
 
続く・・・

次回のコラム
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ブランディングの確立は、顧客を商品に誘導し、商品の価格戦略も操縦する
多くの消費者は実はそれほど、論理的かつ徹底的に商品や価格研究をしてはいません。直感的に、ブランド力のある企業の商品を選ぶ顧客のほうが、徹底研究をする顧客よりもずっと多いのです。

つまり消費者は、ブランド化されている会社名やマークなどから商品を自分自身で連想し、感覚的に購買することが非常に多いのです。
詳しくはこちら

本稿の著者

URVグローバルグループ 最高経営責任者兼CEO
株式会社URVテクノインテリジェンス 代表取締役社長
モデル芸能事務所 DRISAKU エグゼクティブプロデューサー

松本 尚典

松本 尚典

国内外の外資系コンサルティング会社にて、経営コンサルタントとして、長年に渡り、活躍。大手企業の役員の歴任をえて、2015年にURVグローバルグループのホールディングス会社 株式会社URVプランニングサポーターズ(松本尚典が100%株主、代表取締役)を設立。
同社の100%子会社として、2020年に、赤坂に本社をおく、株式会社URVテクノインテリジェンスを設立。
多くの中小企業の成長とマーケティングを、経営コンサルタントとして担ってきた経験を基礎に、企業のマーケティング戦略と、モデル芸能事務所を融合した事業を立ち上げ、その構想のもとに、DRISAKUサイトを主催する。

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