記事の筆者
花川 愛梨
Airi Hanakawa
- 株式会社URVテクノインテリジェンス マーケティング支援事業部デビジョンヘッド
- DRISAKU®︎ モデル
大手企業で、Webデザイナーとして長年にわたり、活躍。
その際、この企業のグループ会社の取締役であった、現URVグローバルグループCEOの松本尚典と出会う。
同社退職後、独立。松本より、URVグローバルグループのマーケティング支援事業の業務を外注の個人事業主として受注しはじめる。URVグローバルグループから、Webデザインをはじめ、SEO・リスティング広告・映像制作編集・カタログ製作デザイン・撮影企画管理など、広範囲な業務を請け、仕事の能力を飛躍的に成長させたと、松本から高い評価を受け、幹部に抜擢される。
2020年、松本尚典が代表取締役を務め、URVグローバルグループのマーケティング支援事業・エンターテイメント事業・情報化事業を担う、株式会社URVテクノインテリジェンスが設立され、マーケティング支援事業部デビジョンヘッドに就任。
同時に、DRISAKU®︎モデル花川愛梨としても活躍中。
飲食業や食品の広告は、写真が命!
URVグローバルグループは、CEOの松本尚典が、本業の経営コンサルタントとしての実績を積みながら、副業で飲食事業を展開して成功を収め、これらの事業を基礎に発祥した企業のグループです。
そのため、多くの飲食事業の経営者の方々が、松本の指導を仰ぎ、その門を叩かれることもあって、私たち、マーケティング支援事業部の仕事でも、飲食業や食品の広告を制作させていただく機会に、恵まれています。
一方で、自分の事業の食の広告を作り続けてきた松本から、私が個人事業主として、URVグローバルグループの仕事をいただきはじめた頃に、松本から、こう言われたことを、今でも、記憶しています。
対面でキッチンが2つある、キッチンスタジオで行うことが多いんだけど、一方のキッチンで、厨房スタッフが、調理を行う“戦争”をして、もう一方のキッチンで、撮影をしていくんだ。
温かいものは湯気を移し込み、冷たいものは、冷たく表現をする。
厨房と、カメラマンの、息がぴったりあわないと、いい撮影ができない。
作りながらだから、時間も長時間に及び、カメラマンも厨房も、体力の勝負になる。撮影スケジュールが、どんどん崩れていき、企画担当の力量も問われる。
一つ間違うと、平面的で、まったくおいしそうではない写真があがってきて、撮影自体が大失敗という結果になるのが、飲食の撮影だ。
僕は、商業写真家で、飲食が撮れる人が、一番、実力があると思っている。
モデル撮影の数倍、飲食の撮影は難しい、と思っておいて。」
これを聞いた時には、「ああ、そんなものか?」と軽く考えていた私も、撮影現場で、その後、想定外の事態が続出して、本当に大変な想いをするのが、飲食の撮影の企画・監督業務でした。
松本の言っていた言葉の本当の意味を、その後、思い知らされることになるのです(苦笑)。
食べ物の広告は、観るヒトがよだれができるほど、本当に美味しそうに表現することが、命なのです。
これは、平面で表現する写真という手法の表現としては、本当に難しいことです。
今回は、私が、過去仕事の中で、苦労した案件の一つ。
東京調布市国領の、手作り餃子の店 吉春さんの案件の例をとって、その現場での奮闘をご紹介したいと思います。
手作り餃子の店 吉春様料理写真撮影・商品三つ折りパンフレット制作
本場中国の手作り餃子にこだわり、地元の方々はもちろん、遠方から、その餃子と料理を食べに来られるファンも多い名店です。
URVグローバルグループでは、この名店の味を多くの方に知っていただくための、三つ折りパンフレットを制作させていただきました。
今回は、吉春様の厨房で、URVグローバルグループの料理写真家による写真撮影から、コンテンツ制作、三つ折りパンフレント制作まで、総合的にお手伝いをさせていただきました。
ご依頼
吉春様は、URVグローバルグループが長年わたり、経営とマーケティングの支援を続ける、あるクライアント企業の社長様から、ご紹介をいただいた企業様でした。
こちらのクライアント企業様で、私が制作させていただいた広告物を、吉春の社長様がご覧になり、
「ウチにご紹介をいただけないか。」
と、クライアント企業の社長様にご依頼があったのでした。
クライアント企業の社長様は、非常に遠慮しながら、
「ものすごく、小さい店舗なので、URVさんが制作をお請けになるような規模の広告物ではないかもしれません。あまりにも小さいお話で、採算があわないようなら、私に遠慮なくご辞退ください。」
こう言っていただきました。
ただ、グループCEOの松本の経営方針では、小さいお客様や小さい金額の仕事を、儲からないからお断りするということを、絶対にしません。どんな小さい仕事でも、どんな小さい企業様でも、経営に対して真剣に取り組まれている企業や個人事業主の方であれば、売上や利益を度外視しても、必ずご支援するというのが、松本の経営方針です。
そこで、松本は、ご紹介クライアント様の制作を担当した私を、担当にして指名して、松本と私で、吉春様のお話をお伺いすることになりました。
方針
松本とともに、私が、はじめて吉春様をご訪問した時、それまで制作されている広告物を松本が、一刀両断、切り捨てました(松本は、このような点では、外資系経営コンサルタント出身らしく、とても厳しいヒトです。お客様に遠慮したり、媚びたり、一切しません。)。
「これまでの広告物では、お店にご来店されるお客様からみて、まったく料理の美味しさが伝わりません。
写真・広告デザイン、すべてが、安直すぎます。
この広告を配ること自体、寧ろ、マイナス効果です。」
御客様は、ご予算が制約されていることを、とても気にされていましたが、松本は、そのご予算の範囲で、最大限、よいものを創りましょうと提案し、その結果、新しいパンフレントの制作をお請けすることに決まりました。
ご予算の制約があったため、3つ折りのパンフレントの制作をさせていただくことになりましたが、しかし、料理の写真などでは妥協せず、プロの写真家をいれて、撮影をし直す方針に決まりました。
URVグローバルグループがお願いしているプロカメラマンの方に撮影を依頼し、私が、撮影プロデュースを行うことになりました。
私が、以前に在職していた大手企業のWeb制作担当をしていた頃、私たちは、写真や原稿をすべて、クライアント企業様の責任で準備いただき、それをデザインするだけの仕事をしていました。
利益を最優先する会社でしたので、高い利益率目標を設定され、それをデザインするだけの仕事を、どんどんこなすことを、会社からも、直属の上司からも求められました。そのため、当時は、私自身、デザインでの仕事では、正直「よいものを創っていく」という感動には程遠く、営業担当の方が出してくる仕事を、次々にこなしていただけでした。
一方、URVグローバルグループでは、Webデザインの担当者が、プロの写真家さんや、コンテンツライターさん、イラストレーターさんなどの専門家を、すべて総合プロデュースすることを求められます。デザイナーが欲しい写真、デザインで表現したい写真を、スタジオ手配から、写真家の選定まで自分で行い、小道具まで予算を組んで揃えます。
お客様に写真や原稿の制作責任を押し付けて、仕事をやったのだから、利益はタップリくださいという、Web業界にありがちな仕事を、一切、松本は許してくれません。
逆に言えば、Webデザイナーが、写真やコンテンツをすべて自分でプロデュースすることで、イメージ通りの仕事を仕上げることができるという、喜びが仕事にあります。
そんな意味で、仕事は責任重大で大変ですが、前職時代の比ではなく、デザイナーとしてのやりがいは抜群です。
餃子の写真撮影で、大きく躓く
ただ、今回の吉春さんの撮影では、予算の関係上、一般に料理写真の撮影で使用する、キッチンスタジオを使う余裕がありませんでした。
飲食事業家でもある松本は、自社の店舗の料理撮影では、キッチンが二面ある、TVの料理番組などで使用されるキッチンスタジオを終日貸し切り、一面のキッチンで厨房の調理人が料理をし、もう一面のキッチンで、その料理の湯気や、冷たさまでを表現するライティングに徹底的にこだわり、撮影をしてゆきます。
私も、松本から、そのような撮影の話をお聴きし、またカメラマンも、皆さんそのような撮影に慣れた商業写真家さんでした。
今回は、そのようなスタジオが予算的に用意できなかったため、御客様の店舗で撮影をすることになりました。
そうなると、場所的・物理的な制約で、ライティングの機材が、充分に持ち込めません。事前打ち合わせを基礎に用意していた機材が、当日、現場で場所的な制約から設置ができないという事態にもぶつかりました。
更に、料理の対象が、主に餃子という、所謂、盛り付けの「映え」がしにくい商品が基本で、器も、普段利用されているモノしか準備できませんでした。実際のお店のお料理と写真がかけ離れてしまうことは、非常にまずいので、実際にお店で使っている器で撮影をすることにしていましたが、それでは、「映え」という観点からは、見劣りがしてしまうという指摘も、カメラマンさんからありました。
このように、お客様の店舗の営業時間の制約もある中、撮影を実行したのです。
私としては、これまで経験したことがないほど制約された撮影環境の中で、なんとか、方法をカメラマンの方と見出し、撮影を行いました。
撮影が無事、終了し、カメラマンから写真が納品されました。
ところが、この写真をみた松本が、私に連絡をしてきました。
立体感がなく、べちゃっとしていて、どの写真も駄目だ。
写真家を入れ替えて、撮影をしなおしをしてくれ。」
こう、松本から言われ、私としては、顏から血の気が引きました。
予算ぎりぎりで撮影と制作をしているため、カメラマンを変えて、再度撮影をしたら、大赤字になってしまいます。
私がそれを指摘すると、松本は、
予算を度外視していいから、やり直してくれ。」
結局、予算の調整は松本に投げ、私が非常に信頼している、別のカメラマンの方に再撮影をお願いしました。
その方は、これまでモデル撮影は勿論、料理の撮影でも、素晴らしい作品を撮影いただいた実績ある写真家です。
ただ、撮影条件は前回と同様、吉春さんの店内ですし、その制約条件は、依然変わりません。
私は、前回の失敗写真を見せ、綿密に撮影の方法を再検討しました。
再撮影の日程もなかなかとれず、お店の営業の関係で、撮影は、年末の大晦日になってしまいました。カメラマンも、お客様も、私も、大晦日の休み返上で、撮影を決行しました。
綿密な打ち合わせを行い、失敗理由を検証し、それを改善する撮影方法をカメラマンの方にとっていただきましたので、今度は、納品された写真に、松本からもOKを貰い、お客様にも、大変お喜びいただきました。
そして、順調にデザインを進め、期日までに納品をすることができました。
最良の要素が揃ってこそ、よいデザインは生まれる
デザイナーは、自分の単独のチカラだけで、成果を出すことはできません。
写真家さんや、映像編集の方、イラストレーターさん、コンテンツライターさんなど、様々な専門家の方の力をお借りして、仕事を進めていきます。
分業体制の中で、自分だけで、PCの前に座り込み、テレワークで仕事を進めても、トータルでのよい仕事は生まれてこないなあ、と実感した、とても良い経験をした仕事でした。
代表取締役 松本尚典のコメント
記事の筆者
松本 尚典
Yoshinori Matsumoto
- URVグローバルグループ 最高経営責任者 兼 CEO
- 株式会社URVテクノインテリジェンス 代表取締役社長
- モデル芸能事務所DRISAKU®︎ エグゼクティブプロデューサー
花川愛梨デビジョンヘッド。
本件、吉春様の広告制作案件、大変お疲れ様でした。
結果的に、とてもよい広告に仕上がったと思いますし、お客様やご紹介者様からも高いご評価をいただきました。
勉強と、仕事の、最大の違い
学校の勉強も、仕事も、コツコツと努力し、その成果が試されるという部分は同じです。
しかし、勉強と、仕事には、大きな決定的な違いがあります。
勉強とは、問いに対する答えがあり、その答えとそれに至る理由を学ぶ行動です。
従って、その成果を試す試験にも、あらかじめ用意された答えがあります。
勉強ができるとは、その用意された答えを正確に見つけ出して答えることができる、ということです。
一方、仕事には、予め用意された答えがありません。その答えが存在しないかもしれないし、逆に答えが複数あるのかもしれません。
これが、勉強と仕事の大きな違いです。
答えが決まっていない仕事は、正解を探すのではなく、仮説をたてて、それに挑むこと
学校では、優等生で高い学歴があるのに、仕事で成果を出せない人がいます。このような人の、一つのパターンが、仕事で、正解を人から学ぼうとしてしまうことに、その原因があることがあります。
このタイプの人は、仕事には、正解が与えられていないのに、正解を探し、その正解が与えられないと、滞留を起こしてしまうのです。
では、仕事で成果をあげるためには、どうすればよいのでしょうか?
仕事では、正解を探しては、駄目です。仕事では、すべて、まず直感で、その方の仮設を立てるしかありません。正解のない仕事には、一つとして、同じ方法がすべてに通用する公式が存在しないからです。
この仮説をたてるための直感を磨くのが、経験です。経験を積むことで、この仮説をたてるための直感が磨かれます。経験がないうちは、経験のある上司などから、この直感による示唆を与えてもらうことで、それを補えます。
花川さんが、私と一緒に、仕事を進めるとき、私から学んでいることは、この直感の立て方です。
まず直感を使い、次に、それに従った仮説を立てます。
これは、正解ではなく、あくまでも仮設なのです。
何故なら、そこに正解がないのが仕事だからです。
そして、そこで、仕事では、次に、この仮説を、実際の場で検証をするのです。
検証ですから、失敗しても当然です。
もし、失敗したら、それを反省し、どこがその失敗の原因だったか問い詰め、その失敗の原因を除去して、やり直すことです。
撮影条件や予算の制約下での撮影など、現場では、方法論に正解がない
今回の撮影は、これまでに経験したことがないほど、制約条件が厳しいものでした。
従って、これまでやってきた方法をあてはめても、よい結果がでるとは限りませんでした。
そして、やってみた結果、最初、失敗をしてしまったわけです。
大切なのは、その後でした。
あなたが、吉春さんの撮影で、失敗した後に、それの原因を探り、再度撮影した、その行動が、原因の除去なのです。
こうした原因の除去の積み重ねで、仕事は成果がでるのです。
正解のない仕事で、最も危険なことは、失敗を恐れて正解を求め、正解がえられないからと言って、仮説をたてて行動することから逃げることです。
「自分はやったことがないからできません。」
「成功できるかどうかわからないので、やれません。」
こういう言い訳をする人が、仕事の世界では非常に多いでしょ?
これらの人は、勉強しかできない可哀そうな人たちです。
どこかに仕事の正解があって、それを導き出せないと失敗するから、失敗の減点を怖れて、逃げているのです。
こういうヒトは、一生、仕事ができるようになりません。
だから、URVグローバルグループには、こういう人材は必要ないのです。
仕事のできない人というのは、(そもそも努力をしないヒトは論外だとして)能力がない人なのではありません。
学校の勉強と仕事を同視し、正解を求めてしまい、直感による仮説と、それによる失敗の反省から逃げ出す人なのです。
その意味で、吉春さんのお仕事は、花川さんにとって、とてもよい機会だったと思います。
失敗の検証こそ、仕事ができるようになる、最も早い道なのです。
僕が、他人よりも、多少仕事ができるとしたら、それは、僕が、学歴が高い、アタマのよいヒト、勉強ができるヒトだからではありません。僕が、自分の直感と頭脳による論理の組み立てを信じ、仮説を大胆にたてて実行することを怖れず、失敗したら、それを徹底的に検証して、やり直す、その積み上げを、大量にしてきたからです。
そうやって、失敗をしながら、個人と、そしてそれを構成する組織は、高いナレッジを形成してゆくものなのです。
だから、絶対に失敗を恐れず、かつ、部下に対しても、失敗を責めないこと。
攻めるべきは、失敗を恐れて、挑戦から忌避するひ弱な、勉強エリート意識なのです。
今後も、失敗を恐れず、大胆に仮説を実行に移す仕事を続けてください。
続く