記事の筆者
松本 尚典
Yoshinori Matsumoto
- URVグローバルグループ 最高経営責任者 兼 CEO
- 株式会社URVテクノインテリジェンス 代表取締役社長
- モデル芸能事務所DRISAKU®︎ エグゼクティブプロデューサー
表裏の顏を持つ、エンターテイメント業界
エンターテイメント業界ほど、表の顏と、裏側の顔が違う業界も珍しいと、僕は思っています。
エンターテイメント業界の表の顔は、消費者や視聴者から、その世界が見える姿。
華々しく、美しく、楽しい、夢の世界。
流行に乗った芸能人が、あれよあれよという間に、売れっ子になる、ドリームを実現できる世界です。そして、この売れっ子になった方々を中心に、昼も夜も、コンテンツが作り続けられ、発信される華麗な不夜城。
テレビのコンテンツ制作に回される投資は、毎年1兆7000億円を維持し続けています。
この莫大な資金が、スポンサーから投入され続け、どうやったら、飽きやすい消費者や視聴者の、その時の満足感を引き出せるかという見地から、夢の世界が作り続けられます。
これが、エンターテイメント業界の、表側から見える顏です。
しかし、ひとたび、このような刹那で美しい顔に惹かれて、その世界に脚を踏み入れると、そこには、エンターテイメント業界に暗躍する企業による、裏の顏が見えてきます。
この裏の顔を、あえて表現するなら、金融業界顔負けの、巨額な投資資金が蠢き、絶え間ない博打が打たれる、過酷な戦国時代。
これが、エンターテイメント業界の表と裏の顔なのです。
アメリカのエンターテイメント業界
僕は、1990年に、大学の新卒で、日本の、現在、メガバンクになっている大手銀行に入行し、1993年に社費留学で、アメリカの大学院に留学しました。
そして、その後、11年間にわたり、ニューヨークのウォール街を本拠に、金融系経営コンサルタントとして仕事を積みました。
ニューヨークには、ブロードウエイを中心とする巨大なエンターテイメント産業の世界があります。従って、僕のエンターテイメント業界との、最初の接点は、ウォール街として、ブロードウエイに暗躍する「裏の顏」の企業の巨額な投資資金を、金融面から支援するところから、始まりました。
巨額な資金が動くエンターテイメント業界は、ウォール街の住人だった僕にとって、非常に素晴らしいクライアントだったのです。
ブロードウェイに展開するエンターテイメント企業とのお付き合いをベースに、アメリカのエンターテイメント界の中心ともいうべき、ハリウッドとの関係に、僕は踏み込んでいきました。
このアメリカのエンターテイメント業界を知っているという僕のポジションは、2007年に本拠地を日本に移し、2015年にURVグローバルグループを創業して、エンターテイメント事業に参入をした後に、日本のエンターテイメント業界の、様々なキーマンの方々との人脈を構築するのに役立ちました。
いわば、アメリカのエンターテイメント業界の情報と、日本のエンターテイメント業界の情報をバーターする形で、僕は、日本のエンターテイメント業界に人脈を作って参りました。
アメリカのエンターテイメント業界は、その動く資金量も、そして動く消費者の量も、はるかに日本の規模を上回っています。
大物の俳優や女優、アーティストには、大量なロビーストが取り巻いており、誰が、正式なロビーなのかが、わからないほど、その構造は複雑です。
外部からみていると、そのカオスのような構造がわからず、大物アーティストに出演交渉を行うのに、誰を通したら、話が決まるのかすら、外部からはわかりません。
変化する日本のエンターテイメント業界
日本のエンタメ業界は、従来、このアメリカの規模から考えると、非常に小ぶりで、かつ、閉鎖的な世界でした。
芸能界というローカルルールが動く世界で、大手の広告代理店やメディアがその動きを独占する世界でした。
しかし、この世界が、今、大きく変わってきています。
GAFAを代表する検索エンジン広告やSNSを抜きにしては、広告の世界が語れなくなり、メディアの役割も大きく変わってきました。
そして、エンターテイメントの世界を支える視聴者も変わってきました。
この特集では、エンターテイメントの世界の裏側に精通した僕の立場で、大きく変化するエンターテイメント業界の今の情報を発信し、今後、日本のエンターテイメントの世界が向かう方向性を示唆したいと考えています。
メディアが主導した、かつての日本のエンターテイメント
かつて、日本を代表するコンテンツであったアニメは、日本が世界に誇る日本エンターテイメントの帝王でした。
このアニメを観察すると、日本におけるエンターテイメント業界の変化がわかります。
50年代の大ヒットコンテンツ 鉄腕アトムから始まり、ドラえもん、そして、ドラゴンボール、などに至る日本のアニメは、その品質で、エンターテイメントの王者 アメリカを大きく凌ぐ発展を遂げました。
アメリカでは、教育のないヒトや子供が読む低レベルのコンテンツだったアニメを、日本が、高度な文化として、世界に発信したのです。
このアニメを支えたエンターテイメント業界の裏役者は、テレビ局と、広告代理店でした。
アニメ制作委員会方式の登場
このメディアや広告代理店が、アニメを買いあげ、テレビアニメとして放映していた時代に、大きな旋風を巻き起こしたのが、ポケモンです。
ポケモンは、メディアや広告代理店という、単一の主体が買い上げるのではなく、玩具メーカーや、ゲーム会社などの業態が広く参加し、それらの異業種が共同出資をする形式をとった代表作です。この形式を、制作委員会方式と言います。
これにより、テレビアニメを中心に、玩具・音楽・映画・コンサート・ゲーム・イベントなどの、広域なコンテンツが複合的に展開する形がとれるようになったのです。
これにより、アニメが、テレビの世界から大きく羽ばたく措置ができあがったのです。
ポケモンは、ライセンス管理を小学館プロダクションが担当し、広告代理店としてJR東日本企画、テレビ局はテレビ東京がつきました。
その原作は、任天堂のゲームボーイです。そして、原作としての基軸は、ゲーム開発会社のゲームフリーク、パブリッシャーである任天堂、クリスチャーズの3社が掌握しました。
つまり、これらの企業が共同投資家組織を形成し、その強みの分野にコンテンツを展開することにより、視聴者は、複合的なエンターテイメントとして、アニメを楽しめるようになったのです。
この制作委員会方式は、アメリカのアーティストのエンターテイメントに対する投資家集団に似ています。
日本のエンターテイメント業界は、制作委員会方式が一般化する過程で、コンテンツに次々に投資を行い、その中の数本に1本出てくる巨大なヒットコンテンツで、大きく利ザヤをとる、投資ビジネスに近い姿に変貌してゆきました。
人気の発火点が、テレビではなくなった時代の、テレビの反撃
この制作委員会方式が主流になってから、エンターテイメントコンテンツの人気の発火点が、テレビではなくなりました。
様々な専門企業が、コンテンツを多面的に売り出し、その売り出しがシナジー効果を発揮して、メガヒットが生まれるようになってきました。
一方で、テレビは、ITとメディアの融合を唱えて、メディアの買収を仕掛けた、ライブドアの堀江貴文氏や、楽天の三木谷氏の攻撃という試練を乗り越える中で、危機感を募らせ、反撃の方法を摸索します。
この反撃によるメガヒットは、「半沢直樹」で成功を収めました。
新たなテレビの反撃は、番組と、ネタの台詞や画像を視聴者が大量拡散するSNSを連動させることによって起きたのです。
半沢直樹は、日曜日の夜という、翌日からの憂鬱に襲われる「サザエさん症候群」に多くの視聴者が襲われている時間帯を狙いました。
そして、沈んでリビングに着座をしている視聴者を、歌舞伎役者の過剰な台詞や顏芸で煽り、SNSのお祭りにかきたてる、という効果で、メガヒットに持ち込むという、科学的な方法を使った、新たなエンタ-テイメントの成功事例を造りました。
数時間のうちに、50万人が「#半沢直樹」でつぶやくという、世界でも稀有な現象を引き起こしたわけです。
この現象は、世界のエンターテイメント業界が注目しました。
「録画」という、スポンサーの大敵に対する「生」の反撃が、半沢直樹現象だったわけです。
動画配信が、ブレイクする長い道のり
今、動画配信サービスは、新型コロナ禍の巣ごもりをうけて、エンターテイメントのど真ん中の中核に位置しています。
動画配信大手は、いまや、Netflix、Amazonプライム、そしてHuluの3社が圧倒的なシェアーを有するに至っています。動画配信などのサービスは、利用するコンシューマーに、常に話題の最新作と圧倒的なコンテンツ数量を、どこでも、低価格で提供する、過酷な競争を行う宿命にある業界ですので、トップランナー以外の企業は、淘汰される運命にあります。
事実、動画配信サービスの歴史は、カンブリア紀の生物多様性が生じる前の地球に例えられます。
先見性のあるエンターテイメント・ベンンチャーが、酸素(売上のおカネ)が生じる前の地球で、辛うじて、二酸化炭素を使って生息をしていた時代が続きました。
ただ、そこに酸素がなかったため、生物も単純な構造で、「目」を持っている生物が発生する以前の状態のように、辛うじて生息をしていたものの、逆に、捕食者もいない時代が続いたのです。
ところが、カンブリア紀に、酸素が生じ、生物が「目」という機能を獲得します。そうなると、捕食者が現れるのは時間の問題です。
そして、捕食者が現れ、爆発的な生物多様性が起こり、そこに、レッドオーシャンの環境が生じました。
動画配信サービスの今(2022年)は、まさに、この状態にあります。爆発的な動画コンテンツがネットと、SNS上に現れ、かつての、単純な生き物は、あっという間に絶滅し、生き残っていても、絶滅危惧種となってしまっています。
こうして、動画配信サービスがブレイクしましたが、今後、動画配信の世界は、激しい生存競争に晒され、M&Aの宝庫となっていくでしょう。
Netflix、Amazonプライム、Huluの大手3社のうち、どこが最後の天下をとるのか?
はたまた、別の巨大なプレーヤーが現れて、3社すらそこに収れんされていくのか?
ここから戦国絵巻が幕をあけるでしょう。
続く
DRISAKU®モデル 一覧
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