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 コレスポンデント口座 その3

記事

北朝鮮 
~核開発と、金融~

第4話

 コレスポンデント口座 その3

前回の記事に掲載した問題に対する3つの手法を復習しよう。
前話「第3話

 コレスポンデント口座 その2」

金融制裁をかいくぐる、3つの手法

  • 方法1 
現金またはそれに代わる現金代用物を物理的に運搬する方法
  • 方法2
 地下銀行を利用して、流動性を提供する方法


  • 方法3
 仮想通貨等、いずれの政府の管理化にも属しない決済手段を使って、流動性を提供する方法



今回は、方法2を解説することにしよう。

地下銀行とは、何か?

皆さんは、中国に関するニュースで、「地下銀行」という言葉を耳にされたことがあるだろう。
地下銀行というのは、その響きが、とても、怪しく、なんだか、マフィアなどの反社会的勢力が経営する秘密組織のように思うかもしれない。

しかし、結論的にいうと、地下銀行は、それほど怪しいものではなく、日本にもたくさんある。

ただ、日本人が日本の中で暮らしている場合、まったくご縁がない存在なだけだ。
そこで、まずは、国際金融の裏舞台に不可欠な、この地下銀行という組織を説明しよう。

通常、国際送金を行う場合、コルレス銀行を経由して国際送金が行われることは、第2話で解説した。
第2話

 コレスポンデント口座 その1

この結果、通常の国際送金では、約4つの、銀行が決済に絡むため、国際送金の手数料は、どうしても高額になる。

例えば、僕が、日本の株式会社URVプランニングサポーターズ(親会社)の三井住友銀行の普通預金口座から、シンガポールのURVグローバルミッションシンガポール社(子会社)の、UOB銀行のプレミアム口座に、運転資金100万円を、資本金として送金したとしよう。

この場合、手数料は、現在、5500円かかる。日本の国内銀行送金で、200円だの400円だのという、送金手数料に慣れていると、この金額にびっくりするわけだ。
企業の場合、確実な送金手段として、国際送金手数料は、必要コストと考え、あきらめて支払うしかない。

しかし、例えば、フリピンから日本に来ている研修生の方が、日本で稼いだ金額を祖国の家族に送金しようとする場合、この手数料は、とても払いきれる金額ではない。そうなると、安い送金方法がないかと、当然探すことになる。

ここで登場するのが、地下銀行だ。

地下銀行の仕組み

地下銀行を使うと、大体、日本国内で送金する手数料に毛の生えたくらいの金額で、送金をしてくれる。そのため、例えば、どこの国でも、外国人コミュニティがあるところ、必ず、地下銀行が存在するのだ。
地下銀行は、どこへでも送金をしてくれるわけではない。ここは日本から台湾専門、あそこは日本から中国専門と、大体、専門特化している。

でも、待ってほしい。

送金業務というのは、金融業務であり、どこの国でも、政府の厳重な許認可のもとにおかれているはずだ。
なのに、何故、このような地下銀行が堂々と各国で営業ができるのであろうか?

実は、結論から言うと、彼らは、「送金」をしていないのだ。
どういうことなのか?

仮に、あなたが、シンガポールで、シンガポールから日本行きの送金をする人のための、地下銀行ビジネスを立ち上げたとしよう。

あなたが借りたシンガポールのゲイラン(シンガポール政府公認の「赤線」地帯)の雑居ビルに、この会社は、ひっそりと、看板も出さずに開業する。利用するのは、日本に安い手数料でシンガポールドルを送金したい日本人で、口コミで、やってくる。

彼らは、ここに、稼いだシンガポールドルを持ち込む。そうすると、格安の手数料を差し引いた、日本円相当分の日本円が、日本の指定の銀行口座に振り込まれることになる。

実は、ここであなたは、実際には、資金を送金していない。

計算書だけが、日本にメールで送られ、日本の、これまた看板をあげていない雑居ビルにある事務所にいる、アルバイトの女の子が、指定されて銀行に、おカネを振り込んでいるだけなのだ。

問題は、そうすると、皆さん、思うでしょ?
それ、ビジネスとして成り立たないじゃん、って。

そんなことない。ちゃんと、成り立つのだ。

つまり、ここに反対送金資金の出資金が、存在すればよい。

つまり、あなたの後ろには、日本在住の日本人で、シンガポールに資金を極秘で送金したい資産家がいればいいのだ。

今、日本の資産家は、タックスヘイブンであるシンガポールに、日本の資金を送金する場合、確実に、日本政府の監視におかれてしまう。

日本人の場合、海外資産を5000万円以上保有する場合、日本の国税局に申告義務がある。

そうすると、タックスヘイブンであるシンガポールに資金をおくり、相続税も贈与税もなく、法人税も所得税も格安なシンガポールで、資金を保有したいと思っても、送金時点で、立ちどころに、日本の国税局の網の目にかかってしまうわけだ。

これを避け、形跡を残さずに、日本からタックスヘイブンに資産を移動させたい資産家から、僕は、手数料を受け取り、日本で資産を預かる。

そうして、その日本の資産家の資金で、シンガポールからの送金を希望する人たちの口座に、日本で振込みを行い続ける。

そうすると、日本の円は減り、その分、自動的にシンガポールドルが、シンガポールに蓄積されるということになり、シンガポールから日本に格安の手数料で小口の資金を送りたい日本人と、日本からシンガポールに密かに纏まった資金を送りたい資産家のニーズをマッチングするビジネスが成立する。

これが、地下銀行の正体。

地下銀行の法的問題点とリスク

彼らは、送金を銀行を抜いて行っているわけではない。単に、双方の国で、資金をヒトからヒトへ移して手数料をえているだけだから、殆ど金融業の免許なしで、このビジネスを合法的に行うことができる。

各国内だけで見ると、資産家から入金された金額から、手数料を差し引き、様々な口座に入金しているだけ。

つまり、企業が売上をあげて、仕入れ先に支払っているのと、全く同じ資金の流れがあるだけだ。

ただ、それが、国境を跨いでグローバルな視点で観察すると、そこに、全く別の国で、その動きと反対の資金の動きが、あたかも、鏡の世界のように動いているわけだ。

しかし、この動きを、国家機関がグローバルに、把握することは相当困難だ。

この方法を使い、資金が実際上、送金されたと同様の結果を、齎すことができるので、金融制裁が行われていても、地下銀行は機能できるわけだ。

但し、この仕組みは、政府の金融当局にとって、また税を徴収する国税当局にとって、極めて危険な存在だ。通貨管理を潜脱した資金移動の手段となり、また脱税の手段として使われることもある。

事実、この手法を使って、資金を移動させたいと願う人たちの多くが、反社会的勢力に関連する団体や、領収書を一切発行していない風俗営業の事業家だったりするわけで、このビジネスは、実際、そういう人たちとの、関りなしでは成立しない。

金融の面ではそれほど問題がないが、このビジネスのリスクは、反社会的勢力との関係性を生むことにあるといっていい。

中国の場合、世界に広がる中国人ネットワークを支えるインフラとして、この地下銀行経済が、世界第二位の経済大国となった中華人民共和国の存続すら、危うくするというところまで、達してしまっているという状態。

国際金融の世界。非常に、ディープな世界だということが、お分かりいただけるだろう。

まさに、小説の中の題材になりそうな世界が日常的に存在している、非常に面白い世界だ。

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