1. HOME
  2. ブログ
  3. 松本尚典のメールマガジン
  4. 北朝鮮 
~核開発と、金融~
  5. 第3話

 コレスポンデント口座 その2

記事

北朝鮮 
~核開発と、金融~

第3話

 コレスポンデント口座 その2

さて、今回は、前話のコルレス口座の基礎を踏まえ、内容を更に発展させ、コレス口座を
巡る、難解なマネーロンダリング事件の仕組
みの「深い森」に、徐々に歩みを進めて行く
ことになる。


さて、ここで読者の皆さんに、アタマの体操
をしていただくとしよう。


問題

あなたは、ウオール街で活躍する、凄腕の金
融コンサルタント。



あなたのクライアントである、アフリカにあ
る某国は、アメリカ合衆国から、貿易制裁や
通貨制裁を受け、ついに、アメリカ合衆国か
ら、金融制裁、つまりコルレス銀行口座の開
設・管理・取引の停止を受けたとしよう。

つまり、某国は、外交政策のミスにより、人
間で言う心拍停止による血液循環の停止とい
う、瀕死の状態に追い込まれたわけである。



この金融制裁の結果、某国の経済は、最悪の
状態に陥った。



この某国では、多くの国民が飢えに苦しみ、
公共サービスが停止して衛生状態は最悪。

大量発生したマラリア蚊に媒介されるマラリ
アによって、首都の道端には、死体が溢れる
悲惨な状態に至った。

この状態を人道的に救うため、アメリカ合衆
国のひいた金融制裁を、あなたは掻い潜って
某国に流動性を提供する策を、某国の政府の
金融当局に授ける決意をした。

あなたが、採りえる金融上の手法をあげよ。

金融制裁をかいくぐる、3つの手法

とりあえず、専門家としての倫理的な問題や
アメリカ合衆国金融当局から「睨まれる」と
いうような、問題は、一旦置いておいて、あ
くまでも、金融技術問題として考えてもらお
う。



倫理問題・妥当性問題と、可能性問題を混
同するという姿勢は、専門家としては相応し
くないのである。



現在までに、世の中に登場した、金融制裁を
掻い潜る金融上の手法は、主に3つある。

ここで一点、お読み頂く上の注意をひとつ。

以下の方法は、既に、金融の世界や金融当局では、誰もが知っている方法なので、今は現実的には使えない。

万が一、あなたが、このような課題を解決しなければならない事態に立ち至ったとしたら、勿論、次にあげるような、既知の方法では駄目だ。誰も歴史の中で、これまで考えつかなかった、新たなスキームを編み出して、実行しなければ、世界のスーパーパワー アメリカ合衆国に勝てないことは、当然である。

  • 方法1 
現金またはそれに代わる現金代用物を物理的
に運搬する方法
  • 方法2
 地下銀行を利用して、流動性を提供する方法


  • 方法3
 仮想通貨等、いずれの政府の管理化にも属し
ない決済手段を使って、流動性を提供する方
法



方法1 現金またはそれに代わる現金代用物を物理的に運搬する方法

現金を運搬する


最も原始的にして最強の方法は、ドル紙幣を
某国に物理的に運搬して運び込む、という方
法である。



某国の同盟国などの協力者を使い、あるいは
某国の軍事力が物理的に実効支配をしている
エリアを経由させ、ドルを物理的に運搬する
方法は、原始的ではあるが、最強の方法だっ
たりする。



ただ、これがドル紙幣だとすると、非常に、
量がかさむ。ジェラルミンの大型ケースは、
通常1億ドル程度しか入らないため、国家を
救うだけのドルを物理的に運搬するとする
と、非常に目立ってしまう。

途中で、運搬
にあたった労働者に紛れて、マフィアなど
の反社会的勢力の構成員などが入り、盗ま
れるという危険もある。



では、この時、現金でないが、運搬に適し
た、現金に匹敵する代用物は何かないだろ
うか?

純金
の延べ棒

純金を運搬する

世界で、昔から、最も使われるのは、「純金
の延べ棒」だ。

純金は、ある意味、現物資産
としては、最も流動性が高く、いかなる政府
も、自国の通貨と交換を保証する。



何よりも、通貨のように、政府の製造番号が
付番されていないため、流通後も、その足取
りが、追跡されることも少ない。

現金よりは、ずっと、重量はあるが、かさ張
らない。

無記名債

かつて、日本にあった無敵の手段 ワリコーとワリシン

一方、この「重量とかさ」という問題を解決
する、スーパー金融商品が、かって日本に存
在した。



「無記名債権」である。

無記名発行し、予め諸手数料や金利を元本か
ら割引くため、通称、「割引債」と呼ぶ。

諸
手数料や金利を割引くため、発行者の特定を
有価証券上、行う必要がない。だから無記名
で金融機関で発行が可能なのだ。


そのため、現金に類似した機能を果たす。



ということは、この発行権限を握ったヒトは、
中央銀行の通貨発行権に類似した強力な経済
的な権力を掌握できる、ということになる。



皆さんは、「ワリコー」「ワリシン」という、
名前を聴いたことがないだろうか?



おそらく、金融のプロや、相当の昔からの資
産家の方以外では、この「ワリコー」「ワリ
シン」なるものとは無縁なのではないだろう
か?



この「ワリコー」「ワリシン」を生みだした
のは、戦後日本の自由民主党のドン 金丸信
氏と言われている。



この「ワリコー」「ワリシン」こそ、資金を
無記名の指図式の有価証券化できるという、
日本が生みだした、画期的な金融商品だった。



つまり、誰が発行したか、が匿名の有価証券
なのであるから、その発効権限者の銀行口座
に現金が保証されている限り(銀行が信任状
を発行する限り)、無記名債権は、通貨と同
様、転々流通する流動性の価値を生み出す。



だから、この割引債を使えば、金融制裁を掻
い潜ることが、可能となるのである。



スイスが「匿名口座」という資金の秘匿保管
場所の産みの親であるとすれば、日本は「無
記名債権」である割引債という、資金の秘匿
輸送手段の産みの親。


当然ながら、このワリコー・ワリシンに目をつけたのは、その筋の方々。

反社会的勢力の資金輸送の道具として活用されたため、90年代に至り、ワリコーとワリシンは、廃止される。



このように、歴史的には、純金やワリコー・
ワリシンという「現金代用物」は、現金また
はそれに代わる現金代用物を、どこからも見
抜かれることなく、物理的に運搬する必要性
があったからこそ、生み出されたわけである。

関連記事