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~核開発と、金融~
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 何故、アメリカ合衆国は、北朝鮮に制裁を
かけることができるのか?

記事

北朝鮮 
~核開発と、金融~

第1話

 何故、アメリカ合衆国は、北朝鮮に制裁を
かけることができるのか?

北朝鮮が、核開発を手放さない理由

北朝鮮。
東京羽田から飛行時間2時間30分で到着で
きる韓国ソウルの金浦空港。
しかし、そのソウルは、北朝鮮との軍事境界
線である38度線から、車で約1時間の至近
距離にある。

北朝鮮は、まさに、日本のすぐ近くにある国
だ。
しかし、その実態は闇に包まれ、そこに
近づく西側の人間は、強い制裁を覚悟しなけ
ればならない。
金日成、金正日、金正恩。三代にわたって、
強い独裁政権を維持している北朝鮮は、その
体制を維持するため、長距離弾道ミサイルを
保有し、日本は勿論、アメリカ合衆国本土を
射程に入れる事態も、現実味を帯びてきた。
この非常に危険な独裁国家が、暴発をする可
能性がゼロとは言えない。この危機感が、ア
メリカ合衆国をして、強い経済制裁にかりた
てているわけだ。

ただ、皆さんは、アメリカの北朝鮮に対する
制裁のニュースを聴いて、こう感じたことは
ないだろうか?
「何故、アメリカは、外国に経済制裁をかけ
ることができるのだろうか?」、と。

例えば、日本も、2019年7月に韓国に対
し、貿易上の制裁ともいえる政策を発動した。
しかし、これは、どこの国でも行うことがで
きる、貿易上の対抗手段だ。これに対し、ア
メリカが、北朝鮮にかけている制裁は、質が
異なる。金融制裁と呼ばれる手法だ。

2019年現在、アメリカの金融制裁は、北
朝鮮だけではなく、イランも対象としている。

何故、アメリカ合衆国は、北朝鮮やイランを
金融制裁ができ、他の国は、仮に自国内にあ
る金融機関にある預金等を、アメリカに制裁
を受けても、文句がいえないのだろうか?

実は、日本で流れているニュースは、「アメ
リカの経済制裁」を報道しても、どのように
やって、アメリカが他国に金融制裁をかけて
いるのか、を報道しないのである。

実は、この金融制裁をかける手法こそ、現代
の国際経済の仕組みの根本に迫る事柄なのだ。
これを理解しないと、北朝鮮が、何故、核を
手放そうとしないのか、理解ができないので
ある。

スーパーダラー事件

この問題を読みとくカギを、皆さんにお渡し
するため、2000年代に起きた、ある、マ
ネーロンダリング事件を例にあげてみたい。

舞台は、マカオ。

旧ポルトガル領で、1999年にポルトガル
から中国に返還されたエリア。

香港と同じ特別行政区ではあるが、マカオの
銀行は、香港と異なり、中国の金融当局の管
理のもとにある。

当時、世界には、「スーパーダラー」と呼ば
れる偽造ドル紙幣が大量に出回ろうとしてい
た。この「スーパーダラー」事件をとりあげ
た小説は、手嶋龍一氏の「ウルトラ・ダラー」
が有名(新潮文庫)。

興味がわいた方は、是非、この小説を読まれ
ることをお勧めする。小説の形態をとってい
るが、手嶋氏は、元NHKの特派員として、
外交の世界に通じる、「情報通」だ。

この小
説は、インテリジェンスオフィサークラスの
情報通にしか、知ることができないはずの、
様々な国際裏情報がちりばめられている、
「問題作」として、今でも、その手の世界で
は有名な作品だ。

「ウルトラダラー」の中では、明らかに、ス
ーパーダラー事件をモデルにしたとしか思え
ない記述が満載だ。そして、手嶋氏は、この
「ウルトラダラー」は、北朝鮮の犯行と断定
して、ストーリーを展開している。
つまり、手嶋氏は、スーパーダラー事件は、
北朝鮮が仕掛けたアメリカに対する金融戦争
であったと考えているわけだ。

そして、実は、アメリカ合衆国のFBIや、
CIAも、同様の確信をもって、当時行動し
ていたのだ。

では、スーパーダラーとはいったい、どのよ
うな偽造通貨なのか?
通常、偽造通貨というのは、偽造集団が
真実の通貨と見分けがつくように、必ず、ど
こかに、真実の通貨と違いを残すものだ。

しかし、ウルトラダラーは、真実のドル通貨
と全く区別ができない。まさに、そのままの
ドル紙幣を、大量に偽造した。だから、これ
が流通に乗ると、銀行でも、通貨発効当局で
も、見分けることができない。

スーパーダラーは、まさに、そのような、恐
るべき偽造通貨だったわけだ。

この「ウルトラダラー」という架空の偽造通
貨に仮託して、北朝鮮が何故、これを作るこ
とが出来たのか・・・。

これを、手嶋氏は、見事に小説の中で解明し
ている。どこまでがフィクションで、どこま
でがノンフクションなのか、全く見わけがつ
かない、という、この小説も、ウルトラダラ
ーと同じように、本物と見分けがつかない、
手嶋氏「自称フィクション」なのだ(笑)。

「小説の外見をとるドキュメントの、ノンフ
ィクション」なのではないかと、僕は思って
いる。

さて、話を現実のスーパーダラー事件に戻そ
う。

アメリカ合衆国財務省は、このスーパーダラ
ーの流通ルートを追跡し、これがマカオの、
バンコ・デルタ・アジアから出たことを突き
止めた。そして、同行を金融制裁対象と発表
したのだ。

その制裁の結果、同行には預金を引き出す顧
客が殺到し、3億パタカ(約45億円)が流
出したと、当時のウオールストリートジャー
ナルは、報道している。

中国当局は、この翌日、6億パカタ(約90
億円)の公的資金を投入し、金融不安の火消
しに回った。

アメリカの金融制裁手法

さて、このとき、アメリカ合衆国財務省は、
英語で、次のような決定を発表している。

ウオールストリートジャーナルの当時の記事
を、日本語訳して掲載する(訳は松本の文責)。

「我々は、米国の金融機関に対し、米国内に
おいて、バンコ・デルタ・アジアを代理する
コレスポンデント口座を開設し、維持し、管
理すること一切を禁じる」

これが、ニュースで言う、アメリカが
行う金融制裁の「手法」だ。

金融制裁とは、アメリカが、マカオにあるバンコ・デルタ・アジアの資金を差し押さえるのではない。

次回、ここに書いてある、「コレスポンデン
ト口座」なるものが、一体、何なのか?を説
明することにしよう。
これこそが、現在のスーパーパワーである、
アメリカ合衆国の持つ、金融パワーの源泉
であり、そのスーパーパワーに対抗する、
北朝鮮やイランが、核兵器を手放さない理
由も、ここに潜んでいるのだ。

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